はやおき


by kado-kayo
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環境ノイズを読み、風景をつくる
著者:宮本佳明
出版:2007年

まず読み終わった感想から言えば、
自分の興味のある領域で非常に面白かった。

大きく前・後半に分かれており、
前半:環境ノイズエレメントの発見事例
後半:実作における環境ノイズエレメントの考え方の利用と、自己分析的な再発見
といった内容。


さて、環境ノイズエレメントとはなんぞや。

街や地図上における違和感のある光景。
その原因を歴史に求める。
たとえば。。。
・道沿いに突如現れるコンクリートのガードレール。古地図によるとそれは海沿いの堤防だった。
・地図上で不自然にカーブする線路。予定されていた路線が着工取り消しになったために、既に出来上がっていた路線のみが残って現在に至る。
・用途も不明な古い溝が、スケールがちょうどよかったために、そのまま現在では駐車場に転用されている
…などなど。

過去に作られたものが遺構となったのち、姿を消してもなお、現在の用地利用に影響をもたらしている。
そういった要素を環境ノイズエレメント、としている。
さらに、環境ノイズエレメントの形成のされ方を、10のパターンにあてはめる。

で、「自らの作ってきた建築の作られ方を再分析すると、実はこの10パターンの中のこれが使われてましたよ」、ということを後半にやっている。

後半はまあ、こじつけ感ただよう感じで…
果たしてこれを設計手法として持ち込むことができるのか、という点は評価しずらい。
ただ、前半は文句なしに面白い。

鹿児島にもかなりの数の環境ノイズエレメントがありそう。
僕も、普段から風景の中の違和感を見つけては「ウヒョー」と興奮している変態ですが、著者はレベルが違う。
指摘されないと気づかないような違和感を見つけてきている。
さらに、古地図引っ張り出して、その土地の歴史も調べて…とかなり気合のいる作業が必要。
でも、あーーすげー楽しそう。。。。。
と思わずにはいられない。

とまあ、終始興奮しながら読んだ1冊だった。
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by kado-kayo | 2008-07-10 23:47 |

建築の向こう側

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建築の向こう側
企画・編集:ギャラリー・間
出版:2003年

「建築をつくる側」ではない人たちが、建築について語る。
顔ぶれはさまざまで、
・丹下研出身の官僚
・『カーサ・ブルータス』編集者
・映画監督・美術監督
・建築専門誌編集者
といった面々。


ミーハーな視点で建築を見る。とはいえやるならとことん、という『カーサ・ブルータス』のつくりかたは面白いと思った。
実際、紙面を見ると、そのあっけらかんとした建築の紹介の仕方には多少面食らう。
が、とことんミーハーな視点から建築を眺めているためか、そこにはモノ以外が入り込む余地はなく、モノそのものがクローズアップされているような感じを覚える。
建築家の御託を排除して、モノそのものを一般に伝えている、といった感じ。しかも楽しく。

『ブルータス』によってワインブームが仕掛けられたらしい。
彼らは、まったく違和感無く建築をそれと同列で語る。これがいい。
建築を専門的にやっていない人たちだからこそできることだと思う。
ミーハーな形であれ、一般の人々の間に建築への関心が広まっていけば、建築家のあり方も社会のあり方も変わっていくのではないだろうか。
裏側を知ると、今までとはまた違った視点で『カーサ』を読みたくなった。


元総務省官僚である月尾嘉男氏の、IT化によってもたらされる建築・都市への影響の話も面白い。
的確な指摘をしており、とても先を見通す力のある人だ、という印象。
なにしろ大阪万博前にすでに建築を見限っている(笑)。

今は、たとえ書店の無い山奥でも、amazonを使えばマイナーな本だって簡単に手に入る。
このような状況においては、遠い・近いといった距離の概念が無視できる。
距離によって発生していたヒエラルキーが無くなり、これは当然都市計画にも影響してくるよ、といった話。


『機動警察パトレイバー』などの監督である押井守も参加。
彼の都市への厳しい目は建築家以上だと思った。
ただ単に美しい・美しくないとか、そういうことではなく、もっと芯の、都市の構造への興味といえるだろうか。

映画の美術監督の種田陽平もまた、都市にこだわる。
街の全体像がないままに、様々な街からディテールをひろってくるという手法を取っているという。
よって、出来上がったセットからは、様々な要素が混ざりあったエスニックな雰囲気が出る。

映画のセットの話を読んでいて、最近観た三谷幸喜の『マジックアワー』を思い出した。
作中に、現実にありそうで無いような絶妙なバランス感覚の街が出てくる。
この映画の魅力をさらに引き立てているなあ…と感心しながら観てた。
建築家なんかより舞台美術の人のほうが都市を判ってるんじゃないか、とか、映画終わってからもぶつくさ考えるほど。それほどショックを受けたわけですが…
で、気になって今調べたらこの映画の美術監督もこの人だった(笑)。納得。


総じて、外からの目線は冷静で興味深い。
建築家には(最近はそうでもないが)、それが無意識にしろ、理想を含めて建築の将来を語ってしまうところがあるように思える。
そういった内部の声だけでこの先の建築を考えるのは不毛なことであるし、危険ですらある。
人口減少、公共事業の削減、建築士資格の変更などなど、最近特に建築をとりまく環境は激変しつつある。
外部の声に耳を傾けることがますます必要となってくる。
常に客観性をもちながら建築に取り組まなければならないと感じた。
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by kado-kayo | 2008-07-03 23:07 |